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目線辺りで揺れる、見知らぬ男の髪。
癖毛だろうか、ふわふわと柔らかそうだ。
「柔らかいですよ、癖毛なんです」
くすっと、悪戯っぽく笑った男が小首を傾げる。
どうやら、声に出てしまっていたらしい。
気まずそうに視線を逸らした和那に、男は楽しそうな声を漏らす。
静かな夜の海に似合わない、明るい笑い声だ。
和那は、男を窺うようにそっと視線を流した。
ふわふわ揺れる髪にすっとした鼻筋、柔らかく弧を描いた薄い唇。
「……笑って、すみませんでした」
女性受けしそうな甘い容貌だなと眺めていた和那に、笑顔を隠した男は小さくそう頭を下げた。
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