合縁奇縁

64/65
542人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
「……何か、あったのか」 「……なんで?」 「さっきと、雰囲気が違う……気がしたから」 右側に置いた鞄から筆記用具を取り出す和那の手が、一瞬だけ止まる。 「何もないよ、大丈夫」 「……」 「ほら、龍騎も早く飲み物入れて来なよ。俺、18時には帰るからねー」 まだ何か言いたそうな龍騎に笑みを返した和那は、また鞄へ視線を下げる。 教科書を掴む指先が、わずかに震えていた。 「……行ってくる」 不満げにしながらも何も言わずに席を離れた龍騎に、和那は知らず詰めていた息を吐き出す。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!