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「……何か、あったのか」
「……なんで?」
「さっきと、雰囲気が違う……気がしたから」
右側に置いた鞄から筆記用具を取り出す和那の手が、一瞬だけ止まる。
「何もないよ、大丈夫」
「……」
「ほら、龍騎も早く飲み物入れて来なよ。俺、18時には帰るからねー」
まだ何か言いたそうな龍騎に笑みを返した和那は、また鞄へ視線を下げる。
教科書を掴む指先が、わずかに震えていた。
「……行ってくる」
不満げにしながらも何も言わずに席を離れた龍騎に、和那は知らず詰めていた息を吐き出す。
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