寂しい正月 *俺様ピアニスト*

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少しくらい、不機嫌になれってんだ。 ここまで快く送り出されると、なんだか愛情の重さが違うんしゃないかなんて思えてくる。 いや、まぁ、先に好きになったのは俺の方なんだけどさ…。 もうちょっと、『傍にいろよ』とか、『一緒にいたい』とかないのかよ、月山薫の馬鹿野郎。 『で?少しは話せるようにはなったのかよ?』 月山薫が聞いているのは、きっと父さんとの事だ。 長い間、父さんとはわだかまりがあって、距離を置いていた。 その事を、月山薫は心配してくれている。 「うん。今日なんて、一緒にオーケストラのコンサートに行ってきたんだ。まあ…家族全員だけどさ。でも、色々と話したんだ。音楽の事とか、外国での生活の事とか。俺には、学校生活の事とか聞いてくれてさ。なんか、少しずつ距離感が縮まってるって感じ?そんな手応えを感じてるんだ」 嬉々として、父さんとの状況を話す。 もう一度、父さんとコミュニケーションがとれるようになった事は、本当に嬉しいし、楽しい。 それもこれも、全部、月山薫のお陰だったりするんだから、本当に感謝してもし足りないくらいだ。 俺と家族とが上手くいっている状況を聞く時の月山薫の様子は、とても嬉しそうな表情をしている。
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