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以前、自分は家族とは上手くいかなかった分、お前には同じ思いを味わって欲しくない、と言われた事がある。
月山薫にとって、家族っていうのは、すごく繊細な部分でもある。
その事を知っているからこそ、家族に歩み寄る努力をしようと思った。
『……なんか、生き生きしてんな、お前』
「え?」
小さな声だったけど、ちゃんと聞き取れた。
『なんだよ。俺と一緒じゃなくて、寂しいって泣き付いてくるかと思えば、そうでもなさそうじゃねえか』
「なっ…!楽しんで来いって言ったの、あんただろ」
しかも、平気そうなのも、あんたの方だろ!
『だからって、恋人を捨てて行ったってぇのに、そんな楽しそうにされると、なんかムカつくんだよ』
「すっ…!人聞き悪い事、言うなよ!あんただって、俺と一緒じゃなくても全然平気そうじゃん!俺は、寂しいって思ってんのに…!」
ムキになって怒っていると、クスクスと笑い声が聞こえてきた。
まさか……。
「あんた、からかっただろ!?」
『いや?それにしても……俺と一緒じゃなくて寂しい、ねぇ?ふーん?』
意地悪な、ニヤニヤした口調の月山薫に、ギリギリと奥歯を噛み締める。
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