第一章

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 お父さんは、私とくだけた意味の言葉で会話しているのだと思っていた。  表情や、仕草や、手話のアクセントでの表現は、親しいというかだいぶくだけていた。  親子なのだから相当するだろうと思っていたが、初めてメールアドレスを交換した日、敬語の文面を見て心底たまげた。  なんの意図があって敬語なのだろう。癖なのか、気を使われているのか。随分悩んだ記憶がある。  途中からいきなりタメ語に戻ったり、敬語が追加されたりグダグダだったので、まあそういうものかと受け入れた。  だから、私は彼が本当はどんな言葉遣いで、どういうニュアンスで喋っているのか、いまだ掴めていない。
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