第一章

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 私は人に悪意を持たれる耐性が、人一倍低い自覚がある。  わりと今でもそれは私の内部に影響していて、その場合は全身がカッと熱くなり、ドクドク脈を打つ。目の前が真っ赤に染まって、不安定になる。  小さい頃は、お父さんが私の普通だった。だから友達にはサラリと伝えられたりした。  いつの頃からだろうか。他人に話そうとしなくなった。思春期に入り、自分の身の回りの事を正確に認識し始めたからかもしれない。  私はもうあの頃の私ではない。  父もあの頃のお父さんではない。  でも、私の中でお父さんはあの頃で時を止めている。離れたからこそ、より一層大切な思いでになった。  それをバカにされたくなかった。  だってそれは、私の一部なのだ。  世の中から虐げられることがあるかもしれないお父さんを、大好きなお父さんを、バカにされたくなかった。  私は、特別に信頼した人たちにしか、お父さんを打ち明けなくなった。
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