第一章

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 あの頃、お父さんは私のヒーローだった。  田舎の悪ガキだったお父さんは、山のなかで遊ぶ方法を、たくさん知っていた  神社の屋根に登ったり、空き地でBB弾をしこたま拾ってきたり。  長く飛ぶ紙ひこうきの折り方、セミやバッタの捕まえ方。  すいかの種の飛ばし方、より速く走る方法。  プールで私を高く投げ飛ばしたり、背に乗せてイルカ泳ぎをしてくれた。  それが全部、キラキラした世界へ私を投入してくれた。全部が嫌じゃなかった。  私はお父さんの後ろを、走ってついて回った。世界がこの人でいっぱいだった。
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