第1章

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それから街の主要施設の場所を教えてもらったり、少し寄り道してクレープを食べたりと、とても楽しい時間を過ごした。彼……森村さんは格好良くて、優しくて、なんて言えばいいんだろう、こういう人が恋人だったらいいのになぁ、って思ったりした。  彼に惚れた訳では無いけれど、いいなぁって考えてしまう。彼女さんいるのかな。いるんだろうなぁ。可愛いんだろうなぁ……。 「あぁ、そうだ。説明してなかったと思うけれど、このアパートの住人はね、変わり者だらけなんだ」 「それが『訳アリ』なんですか?」  無言タイムが急に破られてびっくりしたけれど、なんとか普通に対応できた……はず。 「うん、その、まあ……根はいい人ばかりなんだよ、近寄りがたい印象はあるんだけどね」 「そうなんですね」  相槌を打ちつつ思う。近寄りがたいってどんなだろう。まあ、根が良いならいいか。 「着いたよ。ここが『訳アリ』アパートだ」  言われてふと顔を上げると、下見した時と変わらないアパートが目の前にあった。  建ってからそう年数は経ってないだろう綺麗な外見、3階建て、全15号室まであるその『訳アリ』アパート。今思えば、いわくつき物件とかそういう『訳アリ』じゃなくて良かった……。 「この時間なら大家が部屋にいるはずだから挨拶しに行こう」  こっちだよ、と手を引かれた。少しドキリとしてしまう。こんな漫画みたいなシチュエーションは初めてなものだから、どう反応すればいいのかわからない。 (手汗とか出てないといいんだけれど)  変な心配をしつつ、『101』と筆記体で書かれたプレートの前へ。
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