第1章

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ドアをノックする森村さん。スーツ姿だからか、まるで借金の取り立てのように見えてくる。 「失礼します。シュウキです」 (インターホン押さないんだ……、というかインターホンが無い! 隣の部屋にはあるのに、何でだろう)  ……宅配便の時とかどうしてるんだろう。気になる。 「開けますよ」  ガチャとドアが開く。森村さん(さっきシュウキって言ってた。下の名前かな)の後ろにいるものだから部屋の様子はうかがえない。 「おお、すまないな案内任せちまって。どうぞ入ってくれ」  中から低めの男の声がする。だいぶダンディというか、大人の余裕が出てるっていうか。 「お邪魔します」  彼に前に行くよう促されておずおずと中に入る。あまり嗅ぎ慣れない匂いがする。芳香剤とはまた違った感じの。 「あらぁ、お客さん? もう、マサトさんったら、相変わらず何も言わないんだから」 「ひぃっ?!」  廊下を通ってリビングへ向かう途中、他の部屋から女の人が出てきた。包丁を持って。 「すぐお茶用意するから、ごめんなさいね。……まったくマサトさんは……。そういう所もスキなんだけど!」  そう言って私の前を踊るようにリビング(のキッチン)へ入っていった。  ……包丁を持ってあの部屋で何をしていたのか物凄く気になったが怖いので聞くのはやめておこう。
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