第1章

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「ーーどうぞごゆっくり。あ、そこのお菓子は遠慮なく食べてね。私の手作りなの」 「あ、ありがとうございます……」 「ユカリの作る菓子は美味いぞ。ははは!」 「あはは~……」 さっきの包丁の女性と大家さんはどうやら恋仲で同棲しているらしい。2人とも見た感じは20代半ば程で、そろそろ結婚しても良いのではという雰囲気だった。 しかし由香里さんの両親が2人の交際を快く思っていないらしく、大家さんーー正人さんが由香里さんの実家に猛アタック中なのだそうだ。 「……いやなに、籍を入れる事自体は承諾無しに出来るんだが、由香里は俺にとっても由香里の両親にとっても大切な人なんだ。だからーー」 「正人さんっ……!!」 「由香里……!!」 ……とまあこんな感じでさっきからずっと惚気話のようなものを延々と聞かされているのである。 (いや……流石にこんなに堂々とイチャつかれても反応に困るというか……) 横をちらりと見ても森村さんは平然としていて焦っているのは自分だけなのだと思うと余計焦りが出てくる。
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