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四月七日
都心部に位置するこの街、馨町(かぐわ ちょう)では、この日に町内全ての学校で入学式が行われるのだ。
彼、有村無月(ありむら むげつ)もまた、この日に高校の入学式を控えていた。
そわそわしたまま朝の支度を終え、鏡に映る少々大きめのブレザーを着た自分に目を通し、異常がない事を確認する。
「よし。」
確認を終え、そのまま玄関に向かう。
「いってきまーす!」
入学式。それはこれからの学校生活に最も影響するイベントの一つだろう。
ここで下手な事をすると、ハジけるタイミングを逃したり、友達ができなかったり、最悪不良に目をつけられパシリにされたりする事も有り得るのだ。
つまり、これからの高校生活を充実させていくにあたって最も気を張らなければならない日なのである。
そう思うと少しだけ緊張してしまう。
そんな自分を落ち着かせるように、ふぅと1つため息をこぼすと、後方から聞きなれた声が無月を呼び止めた。
「やっほー!ムーくんっ!」
振り返ると、肩までのふんわりとした栗色の髪をゆさゆさと揺らし、こちらに手を振りながら近づいてくる見知った女性がいた。
四歳の時からの幼馴染み、羽仁遥(はに はるか)だ。
ちなみにムーくんというのは、遥が勝手に無月につけたあだ名である。
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