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「なんなんだよ!!!」
ナツメの声が山間に響き渡る。
「おま、ちょっと黙れ。……頼む」
「ちょっと、……煩い、ナツメ…」
疲れたと言わんばかりの声に、口をとがらせるナツメ。
すぐ傍に座り込んでいるのは、同じギルドのメンバーのカル。
もう1人、レウスはカル程疲れている様子ではなかったが、それでも相当な体力を消耗しているのだと伺えた。
「……うぅう、…わり」
叫びたくなるのもわからないわけではない。
洞窟の中に入れば巨大な迷路になっているうえ、急に壁が出てきてマップが変わるわ、岩らしきものが転がってくるわ、挙句には左右に現れた壁に押しつぶされそうになるわ。
なお彼らは相当の手練れである。
が、あまりにも滅茶苦茶なダンジョンに精神的に削られていってこの状況に陥っていた。
目的のべるふぇごーるのいる場所までたどり着ける様子が一切ない。
「……とりあえず、何か食べよう」
「賛成。もう……何時だ。さすがにちょっと体力回復させようぜ」
「おー」
鞄の中に入った食糧を取り出そうとして手が滑る。
あっ、と思いはしたものの、洞窟の方へと転がっていった丸いリンゴを追いかける気力と体力は、今の彼らにはなかった。
「後で探そうぜ」
その場の誰も拒否することはなかった。
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