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「ん?」
「どうしたの、レウス」
「変なものでも見たのか?」
まだ食べてない、首を振るレウスの指さした先。
どうしたことかと振り返る2人。
彼らが見たのは先ほどから探し回っていた小さな魔王だった。
軽く石化してしまった3人を見上げた彼女は不思議そうに首を傾げた。
黒い甲殻に覆われた両腕で、自分の頭程もありそうなリンゴを抱えていた。
「あ、それ……」
先ほど転がっていってしまった食糧である。
自分を映す彼らの眼と、リンゴを見たべるふぇごーるは、抱えていたリンゴを彼らへと差し出した。
「……ろう?」
“あなたたちの?”とでも言っているのだろう。
思わず視線を交わした彼らだが、不意に鼓膜を揺らしたのはごく小さな腹の虫。
――流れた沈黙。
浅くため息をついたカルだが、じっとリンゴを抱えているべるふぇごーるに視線を落とす。
「いいよ、君が食べなよ」
じっと彼らとリンゴを見比べ、べるふぇごーるは頷いた。
もぐ、しゃくしゃくしゃく。
†
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