「嘘」

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覚醒したのはちょうど五年前の冬。 少女は冷たい風が吹く中、ベンチに座って一人、ずっと誰かを待っていた。 時を同じくして、少年も向かいのベンチに座って何かを待っていた。 向かいの視線を感じる度に見つめ返しては、頬を赤らめて顔を逸らされる。 名も知らない同士の二人に話しかける勇気もなく、黙々と時間だけが過ぎていく。 日が沈みきった頃、少女は突然立ち上がり、向かいのベンチに座っていた少年に声をかけた。 「あなたは誰を待ってるの?」 唐突ではあったが、少年は驚くこともなく笑顔で答えた。
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