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この時、マメ太には、いや他の人にも分からなかっただろうが、西堀は真剣に悩んでいた。
児童養護施設「はっぴぃちゃいるど」の職員である西堀和一(にしぼり かずい)は、両親から虐待を受けた子、心を開かない子、なにも食べようとしない子、逃げようとする子、いたずらばかりする子、色々な孤児たちを見て、そして対処してきた。
しかし、今回の子供は、どう考えても悩みがあるように見えない。
というか、犬だ。ぶっちゃけ、どこをどう見ても中身犬だ。
犬のように育てられたのだろうか?そんな考えが浮かぶが、事故後に、このようなことになってしまったのだという経緯を聞いた。以前は、口数の少ない、大人しくて冷静な子だったと言う。
どちらにせよ、“本当に犬でない限り”、この状態は心の病でなってしまったとしか言いようがない。
真実は“本当に犬であること”なのだが、そんなことはマメ太本人にしか知らないことなのだ。本人も気づいているかどうか危ういくらいだ。
「うーん。とりあえず、子供らと遊ばせるか。」
とりあえず、遊ばせる。
それが西堀が子供たちに行ってきた最初の行動だった。
「おーい!大塚、與儀ー!いるかー?」
西堀はパンパン、と手を叩いて孤児の生徒らを呼ぶ。
大塚、と呼ばれた黒髪のムスッとした顔の男の子、與儀と呼ばれた女の子がやってきた。
「せんせー。なーにー?」
「君たちに、新しい友達の紹介。圭太くんだ!」
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