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ここは楽園だ。
たしかに、俺の友人の言う通りだった。友人は3年前に他界して、その引き継ぎとして俺が来たのだ。
三食昼寝付き、施設内の庭は広大で、暇ならそこで散歩もできる。
しかし、俺は思うんだ。
108番にとっては、窮屈に感じないのだろうか?
「なぁ、108番。外に出掛けたりとかしないのか?」
確か、施設の外は『外出許可証』というものがあれば、自由に出られた筈だ。
そう聞いてみると、108番は心底不思議そうな顔を向ける。
「何で?ここにいれば、全てが事足りるのに?」
「生活面じゃそうかもしれないが、外はここよりもずっと広くて、色々なものがあるぞ。そういう、冒険心みたいなものは無いのかよ?」
そう言うと、108番は顔を伏せる。
「…俺たちは、孤児だ。俺も、53番のような頭の良いやつも、それは例外なく皆同じこと。
俺が思う外に出るってことは、何かに会いたいからだと思うんだ。」
「会いたい?」
「そうさ。家族が居るなら、家族に会いたい。友人が居るなら、友人に会いたい。芸能人に会いたい。歌手に会いたい。物でも良い。……でも、俺たちには、会いたいものが、無い。」
空っぽなのだと、108番は言った。
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