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それでも、と俺は強く思う。
それでも、108番には何か大切なことがあるのではないだろうか。
「なぁ、108番。俺な、お前とはもうすぐお別れなんだ。」
「え…」
108番は少し驚いたような顔で俺を見る。
そんな108番に俺は笑顔を見せる。
ちゃんと、笑えているだろうか?
何せ、"笑う"という表情は、非常に難しい。108番の方が、得意そうなのに、こいつはぴくりとも表情が動かない。
「俺さ、病気なんだよ。すぐに死ぬわけじゃないけど、警備員としては"失格"だ。」
「そ…んなの、病院に行けば良い。」
「俺の代わりはごまんと居る。病院代を出すくらいなら、他の奴を探すさ。俺は大切にされているお前らと違って……」
「同じ命だろ!!!!」
108番は立ち上がり、大声を出す。
ビリビリと声は響き渡り、何名かチラチラとこちらを見る。
「二度とつまらないことを言うな!!」
俺は、そいつの顔を見て、確信した。
ああ、俺の最後の仕事がようやく分かった。
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