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俺は108番と別れ、芽次郎に会うことにした。
ちょうど外回りから帰ってきた芽次郎を中庭で見つけた。
あの真っ白い毛に紫のほっかむりを被っている忍犬気取りみたいな奴は、間違いなく芽次郎だ。
ここは二階だったが、気にせず飛び降りる。
「芽次郎!」
「ドゥオッ!?お、驚かせるな、恵郎。犬でなければ骨折していたぞ、たぞ。」
「だって犬だもん。そうだ、芽次郎、108番についてなんだがな、何か昔の私物とかは残ってないのか?」
芽次郎は真っ白な毛の中にあるつぶらな瞳を閉じて、うーんと考える。
「うむむ。もう入所してから何年も経っているからな…。そういえば、所長室の机の引き出しから、108番の匂いが僅かに香った。もしかしたら、私物が残っているのかもしれぬ、しれぬ。」
「所長室か…」
これまたいきなりの難題だ。
芽次郎は所長室の前を通りかかり、たまたま開いていた時に匂いを感じ取ったのだと言う。
普段は、閉じている部屋だ。
しかし、何でよりによって所長室から108番の残り香が…?
いや、そんなことを気にしている場合ではない。自分にはもう時間がないのだ。さっそく行動に移らなければ。
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