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しかし、到底一人では無理だ。
俺は芽次郎に一か八か頼んでみることにした。
「芽次郎、実はお願いが……」
「所長室に入るつもりか?もし見つかったらどうするつもりなのだ、のだ。」
長年一緒に働いてきたせいか、さすが察しが早い。
「クビではすまされんぞ、最悪毒エサを食わされてお陀仏だ、だぶつだ。」
「だぶつってなんだよ、"お"まで言えよ…。どのみち、俺は長くない。ここを止めてゆっくり余生を過ごすか、大義を果たして死ぬか、同じ犬のお前ならどっちが犬の生き様として相応しいか、分かるだろう?」
芽次郎はじっと俺を見て、やがて諦めたように首を振る。
「…どうなっても知らんぞ。んぞ。」
「承知の上だ。」
「……分かった、それで俺はどうすれば良いのだ。」
それを聞いて、俺は精一杯の愛嬌でじゃれた。
「やりぃ!ノッてくれるって、信じてたぜ相棒!」
「やめろ!舐めるな!逆毛はやめろ!毛羽立つ!羽立つ!」
俺は雑種だが、芽次郎は北海道犬という血統種のようで、見た目に少しプライドを持っていた。
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