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外回りをしてきた芽次郎が言っていた。
『数年前、○○区というところに、人間の子供らを保護する施設があったらしい。その近隣の犬たちは、ある人物を英雄と称えているらしいのだ。のだ。』
もう年寄りになってしまった老犬が、芽次郎に話したのだという。
『その人物は、噂によると、人間でありながら、我等と同種らしいのだ。のだ。』
『え?言ってる意味が、ちょっと分からねぇな。』
歯を食い縛りながら引き出しを引いていると、バキ、と少し動く音がした。
もう少し、もう少しだ…!
『そいつは、犬でありながら人になる決意をした。また、我等が神のバルト様にもお会いしたらしい。らしい。』
『…俺、神話は信じねぇんだよ。』
引き出しの中がチラリと覗き、あいつの残り香が一層強くなった。
あと、ちょっとぉおおぉおおお!!
『んで?その英雄サマの名前は、なんていうんだよ?』
『その者の名前は……』
バキバキ!!と派手な音がして、引き出しはほぼ大破する。
そして、破壊された引き出しと一緒に、床にソレは落ちていた。
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