1Dog:お前の名は!

23/25
前へ
/176ページ
次へ
外回りをしてきた芽次郎が言っていた。 『数年前、○○区というところに、人間の子供らを保護する施設があったらしい。その近隣の犬たちは、ある人物を英雄と称えているらしいのだ。のだ。』 もう年寄りになってしまった老犬が、芽次郎に話したのだという。 『その人物は、噂によると、人間でありながら、我等と同種らしいのだ。のだ。』 『え?言ってる意味が、ちょっと分からねぇな。』 歯を食い縛りながら引き出しを引いていると、バキ、と少し動く音がした。 もう少し、もう少しだ…! 『そいつは、犬でありながら人になる決意をした。また、我等が神のバルト様にもお会いしたらしい。らしい。』 『…俺、神話は信じねぇんだよ。』 引き出しの中がチラリと覗き、あいつの残り香が一層強くなった。 あと、ちょっとぉおおぉおおお!! 『んで?その英雄サマの名前は、なんていうんだよ?』 『その者の名前は……』 バキバキ!!と派手な音がして、引き出しはほぼ大破する。 そして、破壊された引き出しと一緒に、床にソレは落ちていた。
/176ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加