46人が本棚に入れています
本棚に追加
とある街のスクランブル交差点。
大勢の人が行き交う中、人々は出勤、通学、目的の場所に行くため歩き続ける。
街頭のテレビではニュースが流れていた。
『…次のニュースです。
"新狂犬病"感染者による新たな事件が発生しました。被疑者は"新狂犬病"感染が疑われていた会社員男性、秋本氏。
この"新狂犬病"は、原因不明の新たな感染病として、各地で感染拡大が…ー』
人々が足早にスクランブル交差点を過ぎていく中、一人だけ立ち止まった者がいた。
気にする風も無く、周りは避けながら進んで行く。
「……違う、違うはずだ、おれは大丈夫……水が、水を、水で、いや、人が…、こわい、月明かりが、まわり、ひとの、み、ず・、み、み、みみみずみみみみみ、みみみみ、み。」
男はうつむき、顔を覆うようにしてブツブツと小言を呟いていた。
交差点を渡りきると、ついに男はしゃがみこむ。
流石にその様子に男に注目が集まった。
「あ、あのぅ、大丈夫ですか?」
一人の中年の女性がしゃがみこむ男に話しかけた。
男は顔を覆ったまま、荒い息をしながら女性を指の隙間から見る。
「な、ナちスドイツノたイぐんが、攻め、リテ、死体ノ緑が、優シい目玉ギ二、天使ノ来たりテ、
ダ
だ、
ギ、
ギ」
『"新狂犬病"患者の末期症状は、言語障害、続いて爪と牙が異様に発達した後、人を襲うようになります。
感染者を見た場合は近づかず、直ちにその場から避難して下さい。』
男の爪は長く伸び、口の端から牙がはみ出していた。
最初のコメントを投稿しよう!