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「どこ行く?」
「紘斗、気分悪い」
気が緩んだとたん、姫良は泣きそうな顔で訴えた。
「どうした?」
「着物のせい。食べすぎたみたい」
紘斗の心配そうだった顔がおもしろがった表情で歪んだ。
「行き先はおまえのマンションに決まりだ」
電話でタクシーを呼んだあと、紘斗は姫良に腕をまわした。
「紘斗っ?」
「気分悪いんだろ。座るとこはないし、タクシーが来るまで支えてる」
人目を気にして、加えてその行為に慌てながらも、姫良はやっぱり甘えたい気持ちが強くて、紘斗に躰を預けた。
「……あったかい」
姫良が互いにとって口実となった言葉をつぶやくと、紘斗の躰が笑みに小さく揺れた。
-The end.-
Will be continued in the next time.
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