第1章

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「ただいま。」 薄暗い部屋に声をかけ靴を脱ぐ。 もう6時だというのにまだまだ日は低いままだ。 本当の自分に戻る為には化粧を落としてからだ。 風呂に湯を溜めて髪をほどく、服に付いた匂いを落とす為消臭剤をかけハンガーにかける。 一つ一つの行為がワタシを私に戻してくれる。 滲み出る雰囲気こそは落としきれないかも知れないがそれをしなければ顔を合わせられない、あの子たちに。 「おはよう??もう7時だよー??」 「あれ?もう帰って来たの?おかえりぃ。」 「あぁ、ただいま。」 私に戻れた、戻してくれた瞬間。 この時大事な家族に会えた瞬間から 夜の女から世話好きな姉に戻る。 「ねぇねー、今日部活あるから遅くなるからねー。」 「ねぇねー今日休み?」 「ねぇねー僕ねー今日ねー、ハンバーグがいいなぁ!」 他愛もないこの会話は私にとってとてつもない幸せだ。 寝癖をつけた3人が眠さを振り切るように私に話しかける。 私達兄弟が会話出来るのは、休みの日以外ではこの時間だけだ。
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