第1章

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車…見えなくなるまで見送ってしまった… なんだかもやもやしたモノを抱えながら家に入る。 いや、違うって。落ち着け落ち着け。 「ただいまー。」 「おかえりぃ??」 「えっ??まだ6時前だよ?なんで起きてんの?」 「おしっこー。」 「あぁ。」 今日は予定が狂ってしょうがない。 なんなんだ、ほんと。 なんの準備もせず弟に会ってしまった。 …不意打ちって心臓に悪いな。 多少は薄暗いから顔が引きつっててもバレない、はず。 寝癖がついた頭を見送っていつものワタシが私に戻るための準備をしていく。 けど… もやもやが消えない… 酒を飲み過ぎたか。 今日は休みで、兄弟連れて買い物して、その前にどこか出かけて… 思い出さないように、ワタシの頃の思いを連れて来ないように意識的に掻き消して行く。 そうしないと〝ワタシ〟と〝私〟の区別ができなくなる。 〝ワタシ〟は少しうるさくてでも自然と気遣えてモテる〝ワタシ〟 〝私〟は静かで自己嫌悪に陥りがちで兄弟を愛している〝私〟 同一人物だが持っている顔は正反対だ。
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