ワンday

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助けるだけでは終わらない。面白そうなことがあればどこへでも顔を突っ込みたがるのだ。 今のその表情が何よりもそれを如実に語っている。 龍臣は諦めた。 目の前の男に隠し通せるとは微塵も思わない。 大きく溜息を溢し、被っていたフードを外して尻尾も出した。 「……」 現れた灰色の犬耳と尻尾に、龍正は目を開いた。 本物そっくりなそれをまじまじと見て一言。 「…コスプレか?」 ギロリ 睨むことでその言葉に返事をすれば、だよなと笑う龍正。 「しかしコスプレじゃないならなんなんだ?」 また説明しないといけないのか。面倒臭がりな龍臣にしたら苦行だ。 しかし言わなければ誤解されたままなので言うしかない。 龍臣は再びこうなった経緯を話した。 「ほお…それはまた奇想天外だな」 「俺も未だに信じられない」 何度説明してもおかしな話だ。 龍正はそれでもその説明を信じたようで、納得している。 すると龍臣に近寄り、頭を撫でるようにして耳を触ってきた。 「本当にちゃんと生えてるんだな。手触りも本物そっくりだ」 感心したように撫でるその手つきは優しい。 この年になると父親に頭を撫でられることなんてそうない。 どこか気恥ずかしいのと、くすぐったいのとで龍臣は龍正の手を払うように首を振る。 そんな反応を見て龍正は笑った。 「そうしていると本当に犬みたいだな」 「な…」 言っていいことと悪いことがあるぞと龍正を睨むが、当の本人はやはり面白そうに龍臣の腰辺りを指差した。 不思議に思って差された方に視線を向ければ、なんと尻尾がゆらゆらと揺れているではないか。 まさか龍臣の意志に関係なく感情を表しているというのか。 龍臣は顔に熱が昇ってくるのを感じながらも、ビタンとその尻尾を手で押さえつけた。 またしても龍正が笑う。 「そんなに慌てなくてもいいだろ。いつもより素直で可愛いじゃないか」 「…うるさい」
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