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「そういえばさ、若はカップルを羨ましそうに見てたわけ?」
すると、ふと思い出したように羽柴は佐竹に問いかけた。
「そうだな…羨ましいってのもあったかもしれないけど、それだけじゃないようだった。少し悲しげな…どういったらいいかわからないけど、複雑な表情だった」
よくそこまで読み取れるものだ。
萩原も龍臣のことに関すると少し熱が入ってしまう自覚はあるが、佐竹は人一倍その傾向が強いように思える。
やはり昔から傍でついていたからだろう。
「なあ…まさかだけどさ、若の相手、女じゃないんじゃないの?」
「……は?」
佐竹がらしくなく威圧感のある返事をした。
それくらい、羽柴は突拍子もない発言をしたのだ。
粟島と、流石の萩原も目が点だ。
「…なんでそう思ったんだ?」
唖然と粟島が聞く。
「あー、いや、俺も本気で思ってるわけじゃないッスよ?ただ、なんでそんな悲しげに恋人同士を見てるのか不思議に思って、もしかして若は叶わぬ恋をしてるんじゃないかと…」
手をわたわたと振り、慌てて弁解する羽柴に、佐竹は溜息をついた。
「だからって飛躍しすぎだろ。ただ片思いなだけかもしれない」
「そうなんだけどさー」
佐竹の言うことの方が信憑性があるのだが、羽柴の煮え切らない態度を見るに、相手が男説も捨てがたいようだ。
しかし、もしも本当に相手が男であるなら佐竹達三人はもちろん、萩原もいい顔をしないだろう。
「羽柴の考えには驚かされたが、まあ絶対ないことではないからな」
「そうですけど萩さん、もし男だったらどうするんです?」
佐竹の言葉には少し非難的な音が含まれている。
気持ちはわからなくもないが、もしも、百歩譲って本当にそうだったとしたら、それを受け入れられるかどうかだ。
「相手によるな」
萩原は渋い表情で言った。
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