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所変わって龍臣の自室前。
佐竹は扉をノックした。……返事はない。
寝ているのか、それとも自室にいないのだろうか。
もう一度ノックしようとしたところで
「何やってんだ、三人揃って」
廊下の曲がり角から龍臣が現れた。
その手には茶色い袋がぶら下がっている。
「若さん、話があって来たんです」
「?」
どことなく真剣な雰囲気の佐竹に、龍臣は不思議そうに眉を寄せた。
「若さん、俺たちに何か隠してませんか?」
「…なんのことだ?」
龍臣はごく自然に返したが、佐竹は一瞬彼の眉がぴくりと震えたことを見逃さなかった。
「隠しても無駄ですよ。俺たちは気付いてるんです」
「そうッスよ若!一体何を悩んでるんッスか!?」
「、は?悩む?」
「若、一人で抱え込むより、誰かに話した方がいいこともあります」
「ちょっと待て、マジでなんのことだ…」
矢継ぎ早に三人から詰め寄られ、龍臣は慌てた。
そして佐竹たちの背後から歩いてくる人物を見て、全てを悟る。
どこか面白そうに、しかし半分は困ったようにこちらを見る萩原の姿に。
「萩原…」
龍臣は苦々しげに呟き、諦めたように深い溜息をついた。
こう詰め寄られては隠し通すことはできないだろう。仕方がない。
「…わかった。話す。だから変な妄想はよせ」
「わかってくれたらいいんです」
安心した笑みを見せた佐竹に、こいつ本当にわかってんのかと龍臣はげんなりとした。
龍臣は自室の前まで来ると、ガチャリと扉を開く。
若?と不思議がる三人を振り返り、部屋に入るよう促した。
不審に思いながらも部屋に入っていくと、驚いた。
三人は漸く、自分たちの考えていたことがかなり的外れだったことを知ったのだ。
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