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「ふふふ……」
薄暗い部屋の中、小さな笑い声が響いた。
椅子に座り机に向かっていたある人物は、紫の液体が入った試験管を目の前に掲げ瞳を細める。
「完成…」
それは、龍臣が鍛練場でトレーニングをしていた時のこと。
一通りのトレーニングを終え、休憩をするため備え付けられているベンチに戻ってきた龍臣。
持ってきていたハンドタオルで汗を拭いていると、離れた所でランニングマシンを使っていた羽柴もベンチに帰ってくる。
「若、おつかれっす」
「ああ」
羽柴は同じようにハンドタオルで汗を拭い、スポーツボトルに入っているドリンクを煽る。
龍臣もそれに倣うようにベンチの上に置いてあるボトルを取った。
一口飲み、ぴくりと龍臣の動きが止まった。
それに気づいた羽柴が龍臣に声をかける。
「どうしたんすか?」
「いや…なんか味が変だ」
「え、大丈夫すかそれ。傷んでんじゃないすか?」
「少し前に冷蔵庫から出した奴だぞ…」
ボトルにはアクエリアスが入っていたはずだ。
しかし龍臣が飲んだそれは、間違ってもアクエリアスの味ではなかったのだ。
腹痛くなるんじゃないすかーと心配している羽柴を余所に龍臣が中身を確認しようとした
その時だった。
「…っ!!?」
突然、龍臣の体を痛みが襲った。
胸の奥から這い上がってくる息苦しさに、龍臣は思わずその場に膝をついてしまう。
手をついたベンチがガタンと音をたてたのに、羽柴が驚いて駆け寄ってきた。
「わ、若っ!どうしたんすか!?」
「っ…!は…っ」
苦しそうに胸を抑える龍臣の反応はまともではない。
まさかさっきの飲み物に薬物が…!?と顔を青褪めさせた羽柴。
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