ワンday

3/19
前へ
/34ページ
次へ
とりあえず救護班を呼ぶために羽柴は立ち上がろうとしたが、その前に予想外の出来事が起きた。 羽柴の視線は、顔をしかめる龍臣の、頭頂部。 「わ……わか……」 目の前で起きたありえない出来事に、羽柴は喘ぐように龍臣を呼んだ。 痛みと息苦しさが引いてきた龍臣は、額に冷や汗を浮かべながらも羽柴を見上げる。 「…な、んだ…?」 息を整えながらも掠れた声で聞き返され、羽柴はピシリと体を固まらせた。 そして徐々にその顔を赤くさせていく。 意味の分からない羽柴の反応に龍臣は眉を寄せたが、次の言葉で益々眉間のしわを深めることになる。 羽柴は龍臣の頭を指差し 「み…耳ぃぃぃぃぃぃ!!?」 ありったけの声で叫んだのだ。 驚く龍臣。 その頭には、ぴんと立った犬耳。そしてスウェットからはフサフサの犬の尻尾がはみ出していた。 慌てて手鏡を持ってきた羽柴に手渡され、鏡を覗いた龍臣は声にならない声を上げた。 まさかとは思ったが、本当に犬耳が生えている。 震える手で触ってみれば、手触りは動物そのもの。しかも動くし感覚まである。 尾てい骨あたりには同じく犬の尻尾。こちらも動く。 灰色の毛並みは龍臣の髪と全く同じ色の為、余計に生々しい。 「なんだ…これ…」 声に深い絶望感を漂わせながらも、龍臣は呟く。 現実ではありえないようなことが、今まさに目の前で起きている。 これは夢か?そうか夢だ。夢に違いない。 現実逃避したくなるのも仕方ないだろう。 「若…なにがなんだかわかんないすけど、超可愛いッス…」 「ふざけんな」 未だに頬を染め耳を触ろうとしてくる羽柴の手を払いのけ、ギロリと睨む。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加