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とりあえず救護班を呼ぶために羽柴は立ち上がろうとしたが、その前に予想外の出来事が起きた。
羽柴の視線は、顔をしかめる龍臣の、頭頂部。
「わ……わか……」
目の前で起きたありえない出来事に、羽柴は喘ぐように龍臣を呼んだ。
痛みと息苦しさが引いてきた龍臣は、額に冷や汗を浮かべながらも羽柴を見上げる。
「…な、んだ…?」
息を整えながらも掠れた声で聞き返され、羽柴はピシリと体を固まらせた。
そして徐々にその顔を赤くさせていく。
意味の分からない羽柴の反応に龍臣は眉を寄せたが、次の言葉で益々眉間のしわを深めることになる。
羽柴は龍臣の頭を指差し
「み…耳ぃぃぃぃぃぃ!!?」
ありったけの声で叫んだのだ。
驚く龍臣。
その頭には、ぴんと立った犬耳。そしてスウェットからはフサフサの犬の尻尾がはみ出していた。
慌てて手鏡を持ってきた羽柴に手渡され、鏡を覗いた龍臣は声にならない声を上げた。
まさかとは思ったが、本当に犬耳が生えている。
震える手で触ってみれば、手触りは動物そのもの。しかも動くし感覚まである。
尾てい骨あたりには同じく犬の尻尾。こちらも動く。
灰色の毛並みは龍臣の髪と全く同じ色の為、余計に生々しい。
「なんだ…これ…」
声に深い絶望感を漂わせながらも、龍臣は呟く。
現実ではありえないようなことが、今まさに目の前で起きている。
これは夢か?そうか夢だ。夢に違いない。
現実逃避したくなるのも仕方ないだろう。
「若…なにがなんだかわかんないすけど、超可愛いッス…」
「ふざけんな」
未だに頬を染め耳を触ろうとしてくる羽柴の手を払いのけ、ギロリと睨む。
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