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それはのどかなある昼の出来事。
その日羽柴は久々の休暇だった。
せっかくの休み、若頭と買い物にでも出かけようと羽柴は彼の自室に向かった。
「若~!いますー?」
洋式の扉をノックして声をかければ、龍臣は少ししてから扉を開けた。
龍臣の服装はいつものYシャツではなく、羽柴と同じくラフな私服だった。
我らが若頭も今日が貴重な休暇なのだ。
それを知っていた為に羽柴は誘いに来たわけだ。
若頭である龍臣をこうも気軽に誘う人間など羽柴くらいだろう。
「なんだ」
「若今日休みッスよね?俺もなんすよ!今からどっか出かけませんか?」
こうして休暇になると羽柴が遊びに誘いに来るのは初めてではない。
今までにも何回かあり、暇な時は付き合ったりする。
休暇と言っても特にやることのない龍臣は、面倒臭がりながらも意外とその誘いを受けてくれるのだが…
「あー……いや、今日は無理だ」
この日はすげなく断られてしまったのだ。
勿論それを羽柴が簡単に受け入れるはずもなく
「えー!?なんでッスか!?なんか先約でもあるんすか?」
「いや…そういうんじゃなくて…」
「気分悪いとか?」
「いや……とにかく、今日は無理だ。諦めろ」
龍臣は詰め寄る羽柴の体を押し戻し、ばたんと扉を閉めてしまった。
問いかけに歯切れ悪く返してくる彼の様子に、羽柴は不満と小さな疑問を抱いた。
まるで何かを隠しているようだと。
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