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「おい、なん…」
なんだ、と続けようとして、言葉は阻まれる。
ロウがいきなり龍臣の被っていたフードを剥いだからだ。
固まる龍臣の頭に生えた耳を見て、漸くロウは納得したようだ。
「やっぱりか」
「……おい、何がやっぱりなんだ」
散々自分の言葉を無視され、あまつさえ突然フードをむしられた龍臣の機嫌は急降下した。
そんな彼に気付いているのかいないのか、ロウは龍臣を見る。
「同類の匂いがしたんで、まさかと思ったんだよ」
「匂い…?」
といったら、獣の匂いということか?
信じがたい言葉に、唖然としてしまう。
ロウは頷くと、しげしげと龍臣の頭を見やる。
「つかどうなってんだよこれ。いつの間に獣人になったんだ…?」
「んな訳ねえだろ…」
もう説明するのさえ面倒だ。
いきなり犬の耳と尻尾が生えて今まで人目を避けてここまで来たが、龍臣の体力もそろそろ底をつきそうだった。
さっさとこんな悪い夢は覚めてくれと、再び現実から目を背けたくなる。
龍臣が片手で顔を覆って項垂れていれば、ロウは何を勘違いしたのか龍臣の肩に手を回してきた。
「な、なんかわかんねぇけど元気出せよ」
ふわり、とロウの匂いが鼻をつく。
普段であれば気にもしないそれが、なぜだか今日はわかりやすくかおった。
それにその香はどこか匂っているだけで安心できる。
思えば、その時の龍臣は疲れていたのと、犬に近い感覚のせいでいつもの龍臣ではなかった。
「…っ!?」
ロウは目の前で起きた出来事に、体を強張らせた。
項垂れていた龍臣が、ロウの背中に片腕を回してきたのだ。
そして追い打ちをかけるようにその頭をロウの肩に押し付けてきた。
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