ワンday

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部屋に戻ると、さっきまで夢心地だった気分が一気に醒めた。 なんであそこまで眠かったのかが不思議になるくらい、今は頭が冴えている。 そうなると思い出すのは先ほどの自分の行動。 ロウに体を預け眠ろうとしていた自分に、龍臣は死にたくなった。 どれだけ眠たかったからとはいえ、見境がなさすぎる。 今度ロウに会ったらさっきのことは忘れろと忠告しなければならないな。 龍臣は決心し、眠る為にも服を着替え始めた。 フードつきの服で眠るのは好きではない。 仰向けになった時、首のあたりにフードがあると気になって仕方がないからだ。 パーカーとスラックスからTシャツとスウェットに着替えれば、龍臣は疲れたようにベッドに身を沈める。 リモコンで部屋の灯りを消すと、仰向けに寝転んだ。 しかし……尻の下にある尻尾が気になる。 踏んでいて痛い訳ではないが、違和感がものすごい。 眠るときはいい状態で眠りたいと、人一倍睡眠にはうるさい龍臣にとってその違和感は天敵である。 やっぱり横向きで寝るかと体勢を変えようとしたところで、突如体に重みが加わった。 誰かが体の上に乗っかっている。 部屋が薄暗いせいで顔は見えないが、この黒々としたオーラは… 「やっと一人になったな、タツ?」 龍臣が頭の中に描いていた通りの人物、亜笠だった。 勝手に出てくることはもう既にいつものことなので何も言わないが、どうして上に乗っかってきたのか。 「重い。どけ」 短く言うも、亜笠は聞き入れない。 何かが動いた空気を感じた後、再び部屋の灯りが点けられた。 一瞬眩しさに目を細めた龍臣だったが、すぐに目の前にある紅い瞳を睨みつける。 「亜笠」 「へえ…間近で見るとすげえなコレ」 咎めるように呼ばれた名前にも無反応で、亜笠は龍臣の頭に生えた耳に触れた。 柔らかい内側を軽く撫でられ、くすぐったさに龍臣は頭を振る。 そんな主の反応に、亜笠の口角が吊り上った。
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