組員会議

4/15
前へ
/34ページ
次へ
そしてまたその次の日。 夕方の時間、龍臣と佐竹は急遽入った仕事で外へ出ていた。 仕事の方は何事もなく完了し、二人は見回りも兼ねて徒歩で本部まで帰ることにした。 商店街から離れ、民家の中を歩いていると、ふと龍臣の足が止まった。 「どうしました?」 佐竹も足を止める。 問いかけた佐竹の言葉に何も返さず、龍臣はある一点を見ていた。 右方向の曲がり角の先を凝視している。 不思議に思い佐竹もそちらを見てみたのだが、そこには恋人同士が犬の散歩をしている姿があるだけで、他にはこれといって気になるものはない。 一体龍臣は何をそんなに凝視しているのか。 佐竹は龍臣の左隣を歩いていた為、彼の視線を追うことが出来なかったこともあり、その時はわからなかったのだ。 「若さん、何か気になることでも?」 もう一度問いかけると、龍臣はやっと顔を佐竹の方に向けた。 「…いや、なんでもない。帰るぞ」 「あ、はい」 ちらりと向けられたその瞳には、なんともいえない感情が浮かんでいたようで、佐竹はそれ以上何かを聞くことを阻まれた。 それからは家に帰るまで特に変わった様子はなく、佐竹もその時のことは気にしないようになっていた。 しかしふと、龍臣はあの瞳をするのだ。 何かを望んでいるのに、それが叶わないことであると諦めているかのような瞳を。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加