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ある日、誰かが世界を作りました。
その世界は、その誰かから見るところの『球』の形をしていました。けれども、彼は不器用だったので、歪な形の球が出来上がってしまいました。
そこで彼は、最初の球の上にペタペタと、別の層を作りました。それでもまだまだ歪な世界。彼はどんどん世界を重ねて、13個目の層を作ったところでやっと綺麗な世界になりました。
彼はそこから、世界に大地を敷き、水をかけ、生き物を住まわせました。自由に生きる生き物達を見つめながら、彼はニコニコ笑っていました。
そんな彼の存在に、最初に気づいたのは、『人』という生き物でした。人は彼を『神様』と呼び、讃え敬います。神様となった彼は、その優しさから、人のお願いをどんどん叶えていきます。雨が足りない地には雨を降らし、狂暴な動物に悩まされていれば、その動物を絶滅させました。
そんな事を繰り返す内に、人々は神様の存在を有り難く思わなくなりました。神様は面白くありません。その内、世界に興味を無くしてしまいました。
神様に見捨てられた世界には、あらゆる異変が起こります。その中でもとびきりの異変は、神様が今の世界を作る前に作り、人々が『深層世界』と呼ぶ世界から、歪な生き物が産まれたことでした。人々はそれを『魔物』と呼びます。深層世界の魔物達は、人々の住む表層世界を襲い始めます。『こんな歪な形は嫌だ。綺麗な世界が羨ましい。妬ましい。歪にしてしまえ』。魔物達は、嫉妬の塊でした。
当然、人だって黙っていません。人々は兵器や魔法を使って、魔物を退けます。そういうことを仕事にする人も出てきました。人々はそんな彼らを『討伐士』と呼びます。
これは、そんな討伐士の一人が、神様のように世界を見捨てて、世界を壊そうとするところから始まる物語。安心してください、彼はダークなヒーローなんかじゃありません。けど、正義のヒーローかと言われれば、そうでもないんです。彼は彼、たった一人のために、小さな業を背負った、そんな男の子。これは、そんな彼のための物語。
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