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私は点滴のチューブを腕にさしながら、病室のベッドの上に座っていた。
前回の会合の後・・・私は気を失い、いえ・・・意識を手放した・・・。
彼からはまた当分の間の外出禁止を告げられ、薬も増えた・・・。
私は新しく追加された薬が嫌いだった。
朝起きた時の朦朧さが半端ではなかったから・・・。
私はサイドテーブルを引き寄せて、引き出しを開けた。
引き出しの中には、貴重品を入れる小さな鍵式の貴重品入れが付いていた。
私は左手のチェーンに付けた鍵で・・・貴重品入れを開けた。
中には200万円以上の札が無造作に押し込められていた。
すうっと・・・お札の表面を人差し指で撫ぜる・・・。
紙幣の固く・・・そして滑らかな紙質が私の指を通して私の心に伝わって来た。
うん、もう少し・・・もう少ししたら、あなたたちを夜の帳の中へ連れて行ってあげる・・・電飾輝くあの退廃的な街の中へ。
私はそう思うと・・・貴重品入れに鍵を掛けた。
音声を消してあるTVにはよく見かけるワイドショーの司会者やコメンテーターたちが映っていた・・・。
音声が無いのでまるで三流のパントマイムをしているかの様に感じた・・・。
音は・・・コンポに入れたままの『ビリー・ホリディー』がエンドレスにかかっていた。
ベッドに腰を掛けながら・・・私は考えていた・・・。
これからの事を・・・そして、自分の気持ちを・・・。
私は今・・・切実に思っている・・・自分の気持ちに正直でありたいと。
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