わたしの気持ち

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それからしばらくして・・・彼に連れていかれた例の倶楽部で、私は、前と同じく右腕を売った。 買ったのは前の男性とは違う男性で、対価に等しい10分間を・・・私の右腕をただ・・・ただ・・・頬ずりするだけだった。 私はその日、100万円の報酬を右手を売り渡す対価として貰った。 「先生、この倶楽部は一体何なのでしょうか。」 帰りの車の中で私は彼に聞いた。 「フェティシズム・・・と言う言葉を井伊たことがありますか?」 「いえ・・・。」 私がそう答えると、彼はクスリと笑いながら言った。 「では、フェチは?」 「ああ・・・そう言う意味なのですね。」 私は瞬時に理解した。この倶楽部は全体像としての女性ではなく、女性のそれぞれの部分に特異な趣味のある人々の集まりだったのだ。 「・・・でも、腕以外を売っている場面に出くわしたことはありませんが・・・。」 私が、ふと・・・思い出したように言うと、彼は車のハンドルを少しだけ乱暴に回しながら答えた。 「その必要が無いからですよ・・・。」 「えっ・・・?」 彼の言葉に私は、反問した。 「貴女は美しい・・・まるでニケの像の様だ・・・。」 私の言葉なぞ聞いていないかのように彼は、小さな声でそう呟くと続けた。 「近々、この前の別荘に行きましょう・・・この季節は初冬の物悲しさがまるで外国映画の様に感じられるのですよ。 僕は・・・その荒涼とした感じが好きなのです・・・。」 私は彼の言葉の中に、今まで感じたことのない感覚を覚えながら・・・小さく頷いた・・・。
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