わたしの気持ち

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あれから数日経った頃、彼と私は奥秩父にいた。 前回は紅葉が綺麗だったが、今日は荒涼とした冬の寂しげな風景が私の心に焼き付いた・・・。 彼が車止めに車を止めると、前回私達を出迎えてくれた初老の夫婦の内、初老の執事が、少し古めかしい毛のロング・コートを着て出迎えてくれた。 「少し休んでから、昼食にするよ・・・簡単なものでいい・・・。」 彼はそう言うと、鞄と車のキイを執事に預けると、私の手を取って中に入った。 「前回は日帰りだったけれども、今日は泊りにしましょう・・・。」 彼はそう言うと、2階にある部屋のドアを開けると私を中へ誘った。 中は洋室になっておりやや古めかしい調度品が窓の外に見えるここ・・・冬の奥秩父の景観に合っているように感じた。 「食事の用意が出来たら、呼びに来ます・・・・。」 彼は、私の荷物をベッドの脇に置くと、入口に戻りつつ言った。 私は黙って頷いた。 彼が部屋から退出した後、私は窓際にあるチェアに座って、締めきったカーテンを少しだけ捲ると・・・じっと景色を眺めた。 この前来た時と違って、山肌の寒々しい色が目立った・・・空は冬晴れで青々しく・・・その違いが何となく私にはもの悲しく感じた。 昼食は、トーストと、サラダ・・・そしてチーズとワインが付いた。 私は倒れてからあまり食欲がなかったので、サラダだけ少し口を付け・・・ワインの代わりに暖かいミルク・ティーを飲んだ。 彼は、グラスに半分ほど入った赤ワインにチーズを少しだけ摘まんだ。 「この別荘には柴原の温泉から湯を引いてあります。良かったら後で入ったらいい・・・。」 彼はそう言うと続けた。 「食事が終わったら、ああ、そうだ・・・見せたいものがあるのです。」 言葉を選ぶようにして言う彼の言葉に、私は黙って頷いた。
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