わたしの気持ち

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その晩・・・夕食の後・・・私は彼と応接間でシャンソンとクラシックを聴いていた。 会話は殆どなかった・・・。 いえ、薬を飲む時間と、それに合わせた検診・・・その時だけは彼は私の主治医の顔に戻り、端正な顔で私を見ながら脈を取り、血圧を測り・・・触診をしながら私と会話をした・・・。 主治医としての彼は申し分無く・・・その時折発せられる言葉には優しさと共に安心感があった・・・。 しかし、私は先程彼が見せた視線・・・ニケ像の背中を見詰めた・・・の冷たさというのか、例えようのない不安を感じさせる視線を・・・見てしまってから、心が落ち着かなかった・・・。 大好きなシャンソンや、落ち着いたクラシックを聴いても私の心の中はかき乱されていた・・・。 何となく、私はここから出られないのではないかという不安が頭をもたげ始めていた・・・。 私は意を決し・・・曲間で彼に聞いた。 「明日の予定は・・・?」 「・・・朝食を採ったら、街に行きましょう・・・そして、夕方の検診には戻りましょう・・・。 見ていると、先程から貴女の顔色があまりよくない様にみえます・・・疲れているのでしょうか・・・?」 「ええ、多分・・・。」 私は、真意を隠しつつ答えた。 「休みますか・・・?」 「ええ・・・残惜しいですが・・・。」 私は璋育な気持ちを隠しつつ・・・上げる様に彼の眼を見た。 彼は、その顔に微笑をたたえると言った。 「眠剤は使いますか?」 「大丈夫だと思います・・・。」 私の問いに彼は、頷くと立ち上がって言った。 「看護師の話では、良く使うと聞いていたので用意はしてあるのですよ。」 「いえ、素敵な風景と・・・音楽で気持ちよくなりましたので・・・。」 私は、警戒しつつ答えた。 「お送りします・・・。」 彼は、いつもの様に優しく手を伸ばし・・・私の手を取った・・・いつもと同じ優しい笑顔で・・・。
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