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やはり、外出を頻繁にしてたりしていたツケが回ってきたようだった。
彼の別荘から戻って来た私は、その日の晩に熱を出し・・・久しぶりに吐血した・・・。
直ぐに救急外来へ回され処置を受けた。朝方ようやく私は自室に戻ることが出来た・・・点滴を受けながら・・・ではあったのだが・・・。その日の朝の彼の診察はいつもより念入りだった・・・。
「まだ、辛いですか?」
「ええ・・・身体の・・・力が抜けてしまったように・・・感じます。頭痛がして・・・言葉を話すのも・・・辛い・・・です。」
彼は、私の背中に手を回すと、そっと・・・ベッドに横にさせた。
「少し熱が高いようですね・・・点滴に解熱剤を追加しておきます・・・。後は何かありますか・・・。」
「・・・て、くだ・・・さい。」
私の声は、小さく・・・彼の耳には届かなかったようだった・・・。
私は、もう一度言った。
「もう・・・少し・・・ここに・・・いて・・・。」
蚊の鳴くような私の声に彼は気が付くと、いつもの様に優しい笑顔でベッドの隅に腰を下ろした。
「大丈夫ですよ・・・落ち着くまで、ここに居ます・・・。」
彼はそう言うと、私の点滴の針を刺した右腕をそっと・・・撫ぜた・・・。
その時・・・私の耳には彼の小さな声が聞こえた・・・「美しい・・・白磁の極みか、アルビノの芸術か・・・。」そして、私の顔を見て・・・あの、ニケ像を見ていた時のようなぞっとする様な笑みを一瞬浮かべた・・・。
私は・・・その微笑みに耐え難く・・・薬の効果も手伝ってか・・・もうろうとした意識を、乱暴に手放していた・・・。
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