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やがて・・・音が止まった。
私はそっと目を開けた。
隣では彼が煙草を吹かしながら、何か・・・新聞紙大の紙を見ていた。
「ああ・・・眼はどうしようか・・・赤く燃えるルビイがいいか・・・青く静かなサファイアがいいか・・・。」
そして、私の瞼を押し開けると言った・・・。
「ああ、『キャバレー』のライザ・ミネリの様な緑も・・・捨てがたい・・・いっそ、デーヴィッド・ボウイの様なオッド・アイもそそる・・・。
果たして、オリジナルは、何であったろうか・・・。」
彼はそこまで言うと、頷いた。
「ああ・・・亜麻色だったのか・・・それはそれで美しい・・・。」
彼は私の瞼を閉じると言った。
「考えなくてはならない・・・眼の色を・・・髪は・・・ああ、それは何とでもなる・・・と、したら、眼もコンタクトで・・・いや、コンタクトは使えないだろう・・・。
爪は・・・?ああ、両手がないし、右足も売ってしまったから、左足だけか・・・サロメをイメージした赤か・・・妖精の様な薄い桃色か・・・。
これまた迷う・・・。
口紅の色も・・・濃い方が良いのか、薄い方が良いのか・・・。」
彼は私の周りを歩きながら言うと・・・立ち止まって言った。
「時間はまだある・・・その間に考えるとしよう・・・個人的にはやはりオッド・アイが捨てがたい・・・。
配色は・・・、ああ、考える度に心が脈打つ・・・。」
彼は、私の体に手を置きながら・・・とても、人が話す様な内容ではないことを私に話した。
私は目を閉じ・・・ひたすらに機会を待った・・・。
眼が動くのだから、きっと麻酔は失敗している・・・必ず・・・他のどこかが動く・・・。
私の想いを知ってか知らずか・・・彼は・・・私の肌に・・・手を這わせていった・・・。
「両手は明日・・・右足は明後日・・・それが終わったら、君は僕の所有物になる・・・僕の初めての作品に・・・。」
彼はそう言うと私の右乳房にキスをして・・・部屋を出て行った・・・。
手術が明日なら、今日中に私はここから逃げ出してやる・・・。
私は大きく息を吸って・・・身体を動かそうとした・・・。
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