そして・・・

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呼吸が落ち着いてくると、身体がまた少しだけ軽くなったような気がした。 右手を上げ、ドアノブを掴むと私はゆっくりと立ち上がった。 立ち上がった瞬間・・・軽い眩暈がしたが、私は何とか持ちこたえた・・・。 薄暗いオレンジのライトの下、私は部屋の中を見回した。 やがて・・・今までぼんやりとしか見えていなかった景色が段々と形を作って私の目の前に現れた。 私の寝ていたベッド・・・その隣に、無造作に置かれた・・・お金の入った・・・古いアタッセ・ケースの様な鞄・・・そして、彼が持ち込んできた荷物の数々・・・。 時々痛くなる頭を押さえ・・・私は彼の荷物を物色した。 そして、私が欲していたものが見つかった。 金属ケースの中に入った手術用のメス・・・。 私はそれを手に持つと近くにあった布切れで持ち手を巻いた・・・そう、刺す時に滑らない様に・・・。 そして、私はメスをベッドの上に置き、古い鞄の中身を覗いた。 鞄の中には無造作にお札が入っていた。 封がしてある束もあれば、ばらばらにただ詰め込まれただけのお札もあった、いったいどのくらいの額が入っているのだろうか・・・? これだけあれば私の命が尽きるまで不足はない筈・・・、どうせ、そんなに先がないのなら、残りの人生は私の思った通りに生きて見せる。 私はそう決心すると、ベッドに寝直した・・・右手の下にメスを忍ばせて・・・。 彼が来たら、隙を見つけて一気に刺す・・・。 それですべて上手く行く・・・それで私は本当に自由になれる・・・そして、幸せになれる・・・わたしは、そう信じて疑わなかった。 私は目を閉じ・・・逸る気持ちを押さえつつ・・・彼が戻ってくるのをじっと待った。
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