23人が本棚に入れています
本棚に追加
彼が戻って来たのは、それから何時間後だったか・・・私には何日にも感じた・・・。
右手の下に隠した手術用のメス・・・不安になり、私は何度も何度も確かめた。
落ち着くんだ・・・大したことはない・・・昔、気に入らない子をみんなで虐めた・・・その時、みんなで棒で叩いて殴って・・・そうそんな程度・・・。
あからさまに私を殺そうとする彼に遠慮は無用・・・だって私は生き残らなければならないから・・・。
やがて、ドアが開く音がした・・・。
私は目を閉じ・・・薄い呼吸を小さく繰り返した。薄い明りの中・・・私は薄く目を開けて彼の動向を見た。
彼は、私の傍に寄ってくると・・・そっと私の額に手を置いた・・・。
その瞬間・・・彼の顔が苦痛で歪んだ・・・。
私の右手に持った手術用のメスは見事に肋骨の下に刺さった。私はそれをねじる様に引き抜いた。
「ん・・・・んんん・・・。」
彼が膝から崩れ落ち、床にうつぶせになった・・・。
私はベッドから飛び起きると・・・彼が持ってきた道具の中から見つけておいた金属製のハンマーで・・・思い切り彼の後頭部を叩いた・・・血液がピュッと・・・噴き出した。
それでも彼の動きは止まらなかった・・・。
私はもう一度叩いた・・・そして、さらにもう一度・・・潰された虫のように蠢いていた彼は・・・広がってゆく赤黒い血の中で漸く、動きを止めた・・・。
私は・・・お金の入った古い鞄を掴むと、彼の・・・もう動かない彼の傍に古い鞄を抱えながら座った・・・。
息が苦しい・・・息が・・・。
私はそれでも幸せを手に掴んだと考えていた・・・。
何時まで生きられるか・・・でも・・・その時は笑って死んでやろう・・・。
私はそう思って・・・一人小さく笑った・・・。
最初のコメントを投稿しよう!