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あるよく晴れた日の午後。
「あーやっ。こんなジメジメしたとこいないでさ。日向ぼっこでもしようよ」
「……嫌よ」
以前と変わらず、蔵に居させられている綾。
そこに足繁く通う俺。
綾がここに来てひと月近く経とうとしているが、未だに仏頂面か険しい顔しかしてくれない。
「ねー、行こうよ。こんな暗いとこよりずっと気持ち良いって」
「あんたと馴れ合う必要ない」
「またそんなキツイ言葉」
キツイ言葉も健在だ。
女にこんな馬鹿にされたような態度を取られるなんて、普通ならムカつく。
だけど綾にだけは不思議と、そんな感情も浮かんでこなかった。
本当おかしくなってんなー、俺。綾が来てからめちゃくちゃだ。
「ねー、外行こ?」
「しつこいわね。行かないって言ってるでしょ」
「綾に決定権はなーいの」
「はっ!? 何すんの!? 降ろしてよ」
「軽いなー。ちゃんと食べなよ」
嫌がる綾を強引に抱えて蔵から出て、そのまま屯所も出ていった。
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