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「……良いの? これ」
「んー、バレたら怒られるかな」
桜の時期は過ぎ、すっかり葉桜となってしまった木が立ち並ぶ壬生寺。
綾を勝手に外に出した、なんて土方さんに知られたらめちゃくちゃ怒られるだろう。
ついでに言えば総司にもだ。
境内に綾を降ろすと、うーんと伸びをする。
「ん、気持ち良い」
蔵にいる時よりも生き生きとしているその様子に、思わず口元が緩む。
そんな俺に気付くと、綾は怪訝な顔をした。
「何笑ってんの?」
「ん? 綾が可愛いなぁって思って」
「……馬っ鹿みたい!」
あれ? もしかして珍しく照れてる?
僅かに赤く染まる頬はきっと、見間違いじゃないはず。
それに気付いた瞬間、俺の胸が今までにないくらい高まり出した。
なんだこれ。めっちゃ胸が痛ぇんだけど。
思わず右手で左胸を押さえる。
「どうしたの?」
「い、や……なんでもないよ」
「ふーん、そう」
興味なさげに俺から視線を逸らし、ボーッと空を見つめるその姿がまた妙に絵になっている。
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