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いやいやあり得ないっしょ。え? まさか俺、綾に本気になっちゃった……?
どんな女でも本気になるなんてあり得ない。
女なんてめんどくさい生き物だから。
なんなら、この世の中の生物で一番。
「空、キレー」
だけど、なんの変哲もない青空に感想を述べるその姿が、愛おしく思える。
「ねぇ」
「……えっ、ああ、どうかした?」
「何ボーッとしてんの? それに、そこ邪魔。目の前にいたら落ち着かない」
シッシッと手で退けるような仕草。
半ば無意識にその手を掴むと、綾の表情に僅かに驚きが生まれた。
「何? 離しなさいよ」
「嫌だ」
「は、離せって言ってんでしょ!」
やばい、末期かもしれない。ムッとした表情すら可愛いじゃん。
俺の手を離そうとぶんぶんと上下に腕を振る。
「離しなさいよ!」
「はいはい。わかったよ」
パッと手を離すと、綾はそそくさと立ち上がって境内から離れていく。
そして、立ち並ぶ木々の中でも一番大きいものの下に座り込んだ。
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