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「なんて顔してんの?」
小馬鹿にしたような笑み。
決して良い笑顔ではない。
それでも、初めて向けられた笑顔。
「なっ、ちょっ……何すんのよ!!」
「……本当、綾は可愛いね」
腕の中で暴れる綾を離してやる気は全くない。
むしろ強く抱き締めてやると、パァンッと小気味良い音が響いた。
「アホ」
「ひっでぇな、本当。これでも俺、女の子に叩かれたことないのに」
ヒリヒリと痛む頬の原因は当然、綾にやられた平手打ち。
「あ、あんたが変なことするからでしょっ!!」
だけど、焦るその姿を見られたからその代償と思えば安いものだろう。
「私は絶対あんたのことだけは好きにならないわ」
どこにもいない、初めて接するような女の子。
辛辣な言葉をスラスラと述べて、愛想はない。
誰にも媚びないのはまるで、猫のよう。
ただし、飼い猫じゃなくて野良猫だ。
自由気ままで凛としていて、でも人と関わることにどこか怯えている。
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