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「あんたに会ってなければ私はとっくに死んでいたわ」
叩かれても離さない俺に呆れたのか、はあっとため息をつくと綾はそのまま話を続けた。
「だからある意味、あんたとは運命の出会いだわ。……死にたかったのに未だに生かされてるし」
「死なせてなんてあげないよ」
「……そう」
それだけ言って目線を逸らした綾に、違和感を感じる。
こうも大人しいと逆に、どうしていいかわからなかった。
「やっ、何!?」
「おお。やっぱいつもの綾だ」
ひょいと横抱きにして、そのまま木の下に腰をおろす。
そして逃げようとする綾の腰をガッチリと抱き締めた。
「なんか……今日のあんたは調子狂うわ」
「俺も綾に同じこと思ってるよ」
「あっそ」
だって、こんなに大人しく抱き締められてるなんてすげー貴重だし。
胸が高鳴るのはいつもと違う一面のせいか、それともーーなのか。
どんな感情かはわからないけど、これだけは言える。
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