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「それで話っていうのは何かな?」
斑目さんは何事も無かったかのように俺の前に腰を下ろし、話を切り出した。
いつもいつも。
彼は隙の無い格好をしている。
誰でも受け入れるようなスタンスなのに、そこには必ず透明なラップのようなバリアがあって、果たして俺はこの人から本当のことを聞き出せるのか不安になる。
「単刀直入に聞きますけど、斑目さんって隠し子とかいますか?」
「は?」
俺の質問は晴天の霹靂だったようで、斑目さんは目を丸くして固まってしまう。
いわゆるフリーズというやつだ。
口元に右手で作った拳を当てて斑目さんはしばらく考え込んだ後、答えてくれた。
「いないよ。いない。どうして?」
斑目さんは二度否定して、夏輝さんと目を合わせた。
「昨日、見ました。女の人と子供と歩いているところ。たまたま俺の友達がその女の人の知り合いで、それで、そいつが……、女の人に最近良い人が出来たって。だから相手が斑目さんなんじゃないかと」
「理音くん」
斑目さんは至極真面目な顔をして俺の名を呼んだ。
あぁ、不遜なことを言うなと怒られるパターンだ。
でもそれって逆切れじゃないのか。
じゃあやっぱり……。
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