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とある森の中に1軒だけ家がありました。周りに家はなく、買い物や働く場合は少し遠くの街まで行かなければならなかった。
でもその家族…親にとってはその環境はありがたいことで引っ越そうなんて思いつきもしなかった。
(朝…)
森の家には父親が一人と子供が一人だけが住んでいた。親は街まで出かけては食料を調達していた。仕事は何をしているのかなどは子供は一切知らなかった。
子供は無関心だった。親に何をされても受け入れた。泣いたって暴れたって何をしたって意味がないと理解した子供は何もしなくなった。
(手当しなきゃだな…)
子供には右目がなかった。ある日とても不機嫌になって帰ってきた父親がいつも通り暴行を加えられた。そして子供の目が俺の嫌いな奴に似ている。そう言って目に手を伸ばした。
それ以来子供の右目は包帯で見えなくなった。親が目をどうしたかなんて知らなかった。子供にとってはどうでもよかった。
(よしっと)
子供は毎日虐待を受けた。子供には友達もいない、家の周りに民家もない、つまり虐待をされていても誰も気づかない、誰も助けない。
常に体全身が悲鳴をあげ、歩くだけでもう死にそうなくらい痛かった。包帯まみれな全身。例え誰かに気づいてもらえたとしてもこの姿だと誰も助けようなんて思わないだろう。
(あ、やっべ…)
子供はバランスを崩し、倒れた、はずだったんだが子供に激痛は走らなかった。親助けるわけ無い、そう思った子供は目を開けようとしたが日頃の疲労によって動けず、そのまま眠ってしまった。
「あ、おい、ねんなよ」
子供の頬をぺちぺち叩く手は紛れもなく人間のものだったが爪は異常に長く、耳は頭の上について、もふもふした尻尾が付いていた。人間の姿をしているが人間にはついていないものが付いていた。
困った男は尻尾をベット替わりにして子供をその場に寝かせしばらく辺りを見回しては暇を持て余していた。
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