初まりの初まり

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「んん…」 (なんだこのモフモフ……) 「あ、起きたか」 「っ!?」 見知らぬ声がして一気に眠気が飛んだ子供は素早く起き上がった。のだが頭に激痛が走ったため、逃げることはできなかった。しばらく頭を押さえ苦痛で顔を歪めていたが男が襲って来ることはなかった。 頭痛が治まって改めて子供は男の方を見た。ベットまで逃げ、布団で全身をくるみ、顔だけ出した状態で。 「誰だお前…」 「助けてもらった癖に生意気なこという餓鬼だな」 「助けてもらった覚えは――」 子供は記憶を漁ったが助けてもらったことなんて、ましてや会ったことなんてなかった。首をかしげる子どもに向かって男は近づき睨みつけた。 子供は驚き覚えもないことに対して礼を言おうと口を開くと男が先に口を開いた。 「さっき、お前が倒れる前、」 「…あ、お前だったのか」 倒れるとき誰かが支えてくれた気がする、誰かにあんなに優しく触れられたことなんてない、なんて考えていた気もする。そんなことを考えながら子供は相手をじっと見つめた。 「ありがとな」 短く素直に子供は礼を言った。たが、必要以上に関わらないように努力をした。子供は希望を持たないように努力をした。絶望するのは嫌だから。 そんな子供を見た男は子供を布団ごと担いで家を出た。子供は驚き抵抗したが男は話を一切聞かず自分の住処に行った。子供は食べられるとそう思って死ねるならまぁいいやくらいの軽い気持ちで抵抗をやめた。 「えっ……?」 男の住処に連れてこられた子供はなぜかお風呂に入れられていた。訳も分からず身ぐるみ全部はがされあったかいお風呂に入れられた。子供は混乱していたが男に殺意がないことはなんとなくわかった。 男は混乱する子供をただただ見ていた。 「お前くせぇんだよ、どうせ襲われたんだろ?」 子供はビクッと反応した後顔を曇らせ男と顔を合わせようともしなかった。男はため息をついて別にそんなことはどうでもいいと言っては子供の体中に巻かれていた包帯を外していった。
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